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  • 執筆者の写真笠原メイ

【深夜、アダルトコーナーにて】

更新日:2020年4月16日

24時間営業のレンタルビデオ屋で、深夜から朝まで働いて、お金を稼いでいた時期がある。時給は1150円。群馬の時給としては最高額だった。だが、もちろん問題があった、蓋を開けてみれば深夜帯チームは、80%がアダルトコーナーでの仕事だった、正直きつかった。なにがキツイかと言うと、その店舗は「北関東最大級のアダルトコーナー」を所持しており、それを誇っている店。すなわち深夜ともなれば、ほぼエロビデオ屋と化すのだ。望んでない時のエロほど、しんどい物はない。


毎週100本とか新作のエロビデオが店に届き、目印のシールを張ったり。番号順に棚に並べたりするのだけど、パッケージやら背表紙が、ギンギラした色彩で、目に痛い。攻撃的で、精神に来る。やはり欲望というのは暴力に近いものだと感じる。18禁の暴力の海だ。手にしたビデオの題名なんかを迂闊に読むと、げんなりする内容だったりするので、なるべく見ないように働いた。


膨大な数、一体、誰がこんなに観るんだ… とか弱音を吐きながら。孤独に一人、迷宮のような、アダルトコーナーで黙々と作業した。お客さんは幽霊のように存在感を消していて、いらっしゃいませは言わないルールだった。朝までに棚替えをしなきゃいけないゾーンは、あまりに広くて。砂漠の砂をホウキで掃いてるような気分、終わらなければサービス残業だ。あの店舗で1年も働けば、誰でもエロ博士になれる事だろう。一方レジの仕事は楽だった。新規カード会員の手続きなどの説明がめんどうだったけど 、深夜は客足が落ちる 。暇だからレジの奥に引っ込んで、発売したばかりのジャンプを読んだり。堂々と居眠りを決め込んだりしてた。


月に一回、サービスデーという、アダルトビデオが10本で1000円と。魔法のような値段で借りられる日があった。その日はめちゃくちゃ忙しかった、そして僕の中では、伝説になってる人物だが (影で王様と呼ばれていた)50代くらいのおじちゃんで、サービスデーだけ姿を現して、いっぺんに30本(!)レジにどかーん!!と置いてくる、その潔さと、ラインナップの豊かさ。決してテキトーに選んだ30本ではなく、選りすぐりの30本… 気合いに満ちた30本。一切の妥協なし、きっと選ぶだけで、2時間以上はかかる。


まるで武士だった 。エロ・ソムリエだ。あのエネルギーや情熱を、なにか違うパワーに還元したら、きっと奇跡的な偉業をなしとげる人物になっただろう。どうでもいいけど、、、ってか30本も借りても一週間で見られる訳ないし。ダビングとか転売してたのかもしれない。日本人は世界から見ても、かなりの変態らしい。まあ、偏っているよね。


その後、 働いてたレンタルビデオ屋は、ゲオに買収されて、全店舗がゲオに変わって、深夜帯の営業がなくなり、時給が下がることになった、店が変わるとやり方も変わるし 、色々めんどうくさい、って思って 、ゲオになる前に退職した。あの頃、エロに囲まれて、やれやれ、と何度ため息をついたことか、よく覚えている、何事も経験かな、なんか時間の無駄だった気もするけど。


笠原メイ




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