19歳の冬、駅で乞食のオジさんに2000円騙し取られた事がある。「交通費だから、親戚の家についたら、必ず返すから!」と必死に言われて、僕はその時すごく急いでたし、正直めんどくさくて 。2000円とレシートの裏に住所を書いて渡した。人から見たら乞食にカツアゲされてる図に見えそうだと思った。デートの時間に遅れて。彼女に事情を説明すると 「馬鹿じゃないの?お金なんて返ってくるわけないじゃん」と言われた。
≪その時、彼女の顔はとても怖かった≫
僕は馬鹿で、もちろん金は返ってこなかった 。でも想像してみた。イマジン。あの物乞いのオジさんは、多分2000円で真っ先に煙草を買い、美味そうに一服しながら僕の渡したレシートを、チラッと眺める事もしないで灰皿に捨てて。その後、立ち食いそばか、牛丼でも食べて。満足して、残ったお金でどこかに旅立ったんだと思う。僕が考え着かないような遠い町まで。小銭も持たずに、携帯も持たずに 、次に金を恵んでくれる「馬鹿なお人よし」を探して「ライク・ア・ローリング・ストーン」という曲をボブディランが歌っているけど、もし、いつか僕が乞食(転がる石)になったら。そんなに強く、生きていけるだろうか、きっと難しいだろう。早く路上へ出たい、僕にとっては
音楽スタジオは狭すぎる。